【受付時間】【午前】09:00~11:30
【平日午後】15:00~18:00
【土曜日午後】15:00~17:30
【日曜・祝日】午前のみ診療、予約診療のみ
※ご予約はお電話もしくは院内で直接お申し込みください。

0538-49-2255

〒437-0127 静岡県袋井市可睡の杜31-1

ステロイド剤

私達獣医師が処方する薬の中で、最も重要であるにもかかわらず、同時に最も誤解されている一群の薬が、いわゆるステロイド剤です。

炎症を取ったり、アレルギーに拮抗したりするのがその主な薬効ですが、犬や猫に対する効き目は本当に抜群のものがあります。

実は、人間の医療においても、その効力は周知の事実なのですが、御承知のとおり、何しろ副作用が強いために、どうしても使わなくてはならない症例以外日常的に使われる事はありません。

そんなわけで、ステロイド剤と同じくらいの効き目があり、しかも副作用の少ない非ステロイド系消炎剤、坑ヒスタミン剤の開発が盛んに行われるようになり、現在も続いています。

私達の世界でも、人間の医療の真似をして、そのような薬剤が多数試みられていますが、やはり、効き目という点ではイマイチ、イマニ、イマサンの感は免れていません。

要は、副作用ですよね。本当に、人間の場合同様、犬・猫でもステロイドはそんなに怖い薬なのでしょうか?

答えを先に言ってしまいましょう。否です。使い方さえ誤らなければ、ステロイドは神の薬であって、決して悪魔の薬ではありません。よほど長期にわたって連用しない限り、人間のように、『ムーン・フェイス(顔がまんまるになる)』になったり、胃潰瘍になったり、極端な免疫不全になったりする事もありませんし、ステロイドがなければよい状態が保てなくなる、いわゆる『薬剤依存』になる事もありません。

せいぜい、水を多く飲んだり、食欲が昂進したりする程度です。

くどいようですが、私は40年間この仕事をしています。

その間、ステロイドを使用した症例はそれこそ、天文学的数字になります。

その中で、あきらかにステロイドの副作用で死亡した症例はたった2例しかありません。

2例とも10歳くらいから、しつこい口内炎を起こして食欲がなくなった例で、あらゆる薬剤に反応せず、唯一ステロイドにのみ反応して食べられるようになる、大変やっかいな症例でした。

この2例は何れも15歳で化膿性膵臓炎(ステロイドの副作用と思われます)を起こして死亡しましたが、最後まで十分な食欲があり、飼い主さんも大いに満足していました。

要するに、この程度なのです。 少し前のテレビで、もっともらしい顔をした医者がペットが媒介する人間の病気について述べたあとで、あたかも、ペットは人間の健康にとって有害である、と思わせてしまうような発言をしていましたが(この問題については、また稿を改めて述べます)、ステロイド有害説もこれと同じで、ささやかなマイナス面を捉えて、その他の圧倒的に大きなよい部分を殺してしまう愚を犯している、といってよいでしょう。

特に近代獣医学は、人間の医学の物まねから発達してきた部分が多すぎたために、このような、非現実的なミスを容認してしまった訳ですね。

ステロイドを処方されている犬・猫の飼い主さん、ご心配なく。決して危うい使い方はしませんから、安心してくださいね。実は、詳しくあげていけばきりがないのですが、また後日。

 

前院長日記より抜粋